シンギング・セラピーとは

 

 

シンギング・セラピーのなりたち

シンギング・セラピーは、スウェーデン人のオペラ歌手であったヴェルベックが自らの声のトラブルを解消するために生まれたアンカヴァーリング・ザ・ヴォイス歌唱法をベースにして発展しました。

彼女が声の研究を進める過程で、彼女の夫、ルイ・ミヒャエル・ヴェルベックの紹介でルドルフ・シュタイナーと出会います。

この出会いをきっかけにして、シュタイナーとの共同作業がはじまりました。

ヴェルベックは1920年、30年代は歌唱教育の基礎を作り、後年はより集中して歌唱におけるより治癒的な働きの研究に没頭しました。

とりわけシュトゥットガルトのヴァルドルフ学校(*注:日本ではシュタイナー学校と呼ばれる)の校医を務めていたオイゲン・コリスコ医師との共同で多くの患者を担当しました。

晩年は南ドイツのエックベルデンに移り住み、そこでは障碍を持つ人たちとセラピーを精力的に行いました。

シンギング・セラピーの特徴

歌うこと

歌には音楽的なものと言語的なものが互いに結びつけられています。

音、メロディー、ハーモニー、言語音(子音・母音)、単語、言語がリズムによって秩序付けられ、歌の中に全てが結び付けられているのです。

ですから歌う人は、「歌うこと」と「話すこと」という二つの芸術のなかを等しく動く必要があります。

セラピーでは、この二つのことを別々に練習していきます。

音楽的なものとして「響き」の練習、そして言語音的なものとして「子音・母音」の練習です。

響き

声に付随された響きは体の楽器を整えた程度に応じて、音が美しく、または美しくなく現れ出ます。美しく鳴るのは、音が流れ出ることや通過することに体的なものが何も妨げないときであり、音が美しく鳴らないのは、音が外に出ていこうとする振動において、引き留められ、捕まえられているときです。

現代の生活では、慢性的な血行不全、肩や頸のこり、舌の付け根の硬さ、横隔膜域や腹部の硬直などが見受けられることが多々あります。受療者の状況を個々に知覚しながらセラピストは美しく鳴らない原因を把握して、適切なエクササイズを選択して受療者と共に取り組みます。

言語音(子音・母音)

言語音は子音と母音で構成されています。シンンギング・ゼラピーでは、この子音と母音の音の響きを大切にしています。そして、個々の音が正しく形成されて響いているか、もし正しく形成されて響ていない場合は、正しい響きになるように受療者を導きます。

呼吸

ふだんの会話や食事をしているときには、自分の呼吸に意識を向けることはほとんどありません。しかし、歌う場合にはどうでしょうか?最後まで一息で歌い切りたかったのに、あと少しのところで息が続かなかったという経験は多くの人があるのではないでしょうか。そのくらい呼吸は歌うことにとって、大切になります。

シンギング・セラピーでも呼吸に着目して練習を行います。しかしその方法は従来の呼吸法とは違っています。シンギング・セラピーの場合は人の意識を呼吸に向けないように、恣意的に影響しないようにして、芸術的な経過を通して間接的に刺激するようにします。歌うなかで、空気に対するふさわしい動きを通して呼吸プロセスが再び本来のリズムに吸い込まれ、引き取られ、組み込まれて全体のプロセスが次第に自ら力を得るように呼吸経過の統一的なリズムを強める練習を行います。

シンギング・セラピーの診断方法

セラピストは受療者を病名では判断しません。同じ病名だとしても個々一人ひとりの生い立ちや生活環境は違っているからです。

セラピー初日に受療者から生活全般について様々なことについてお聞きします。

質問は食生活、睡眠の質、代謝について、趣味、休暇の過ごし方など多岐に渡ります。そしてそこから、身体、心、精神のバランスを崩しているところ、また、思考、感情、意志の部分でバランスを崩しているところを見ていきます。

そして、実際に受療者の声を聞かせてもらいながら、その人に必要な母音と子音を組み合わせて、簡単なメロディーに乗せて歌って頂きます。

 

シンギング・セラピーはどのように役立つか

シンギング・セラピーを受けるにあたって、音楽の知識や経験があることが条件ではありませんし、歌がうまいこともまったく必要ありません。どなたでもセラピーを受けて頂くことができます。

なぜなら、セラピーでは歌を上手に、綺麗に歌うことが本来の目的ではないからです。そこへ向かうプロセス自体が大事なのです。受療者はセラピーの中で様々な課題に取り組むことを通して、自己認識を深めていきます。それは、自分の中にある様々な感情や感覚を認め、受け入れることでもあります。