去年の今頃、私はフィンランドを旅していました。学校を卒業して以来2年ぶりのフィンランドです。
空港に着いたらラハティの友人を訪ねました。ラハティはヘルシンキから小一時間の所にあります。
友人とゆっくり過ごした後、一人で一日ヘルシンキに行きました。学校に行っていた間は休みの度にヘルシンキに来ていました。
街の中心の大勢の人でにぎわっている通りを抜けて、サボイホテルの脇の坂道を上りきった所を少し横に入ると、私がいつも行っていた中華レストランがありました。
そのお店も偶然その前を通った時に見つけたのです。
窓ガラス越しに店内を覗くと、女性の店員と目が合いました。
彼女はにっこりとほほ笑んで、お店のドアを私のために開けました。
彼女の笑顔と、目が合わなかったら、そのお店に入っていなかったかもしれません。
それからというもの、決まってヘルシンキへ行くとそのお店に行きました。
そのうちにお店の人も私の顔を覚えていてくれるようになり、話しかけてくれるようになりました。
学校を卒業して日本へ帰る前の日もそのお店によりました。今までのお礼と、またの再会を約束しました。
紅葉で黄色に染まった街路樹を急ぎ足でそのお店に向かいました。
私に会ったら驚くかしら? なんと言って迎えてくれるのだろう?
しかし、そのお店があった所には別のお店が建っていました。
どこかに移転したのかもしれないと周りを歩いてみたのですが、同じ名前のお店を見つけることはできませんでした。
いったい何があったのだろう。故郷に戻ったのだろうか。でも、どこかで新しい店舗を構えてお店をやっているかもしれない。
いいえ、絶対にそうであってほしいと思いました。そうしたら、またヘルシンキの街中で巡り合うことができるかもしれません。
いつもだいたい決まった所を歩いていた私ですが、これからは再会を夢見て足を運んだことがない所へも行ってみたくなりました。
アントロポゾフィー歌唱療法士 平井久仁子