シンギングセラピスト(歌唱療法士)平井久仁子です。
私はレッスンの時に必ず行うエクササイズがあります。それは、顎の周辺を緩めるエクササイズです。療法の患者さんにも必ず行っています。
顎が緩むようになると、お腹も緩まってきます。その結果、呼吸が楽にできるようになるんです。
今回は顎を柔軟に動くようにするためのエクササイズをご紹介します。
顎のエクササイズ
下の顎が絞り切れていなくて、端からぽとぽとと水滴が落ちているバスタオルをイメージしてください。 両方の耳の前のぐりぐりとした骨がありますね。この部分が顎関節です。この骨と骨の間に洗濯ロープがピーンと張られています。
そして、先ほどイメージした顎(濡れて重たいバスタオル)をこの洗濯ロープに掛けるように落とします。ピーンと張った洗濯ロープは、バスタオルの重みでたわんでいます。それくらい鮮明にイメージの力を使って想像してみてください。
その時の言語音は、Ng-aを使います。そして、綺麗に歌う必要はありません。湿ったバスタオルの重みを顎に感じてみてください。自分で顎が開いているつもりになっていても、実際には顎が開いていない人が殆どです。
「顎が開いていませんよ」とお伝えすると、今度は力で開こうとします。 それでは、余分な所にも力が加わって、固くなります。また、無理に開かない顎を力を使って開けようとすると、顎関節が痛むことにもなります。
顎が自然にゆるむ確認方法
顎の構造を考えると、自然に開く場合、下の顎は真下に開かれるのではなく、少し前にスライドして斜め下に開かれます。それを真下に開こうと無理な力を加えてしまうと、顎関節に痛みが生じてしまうのです。
自分の顎がどのくらい自然に開くのか、確認する方法があります。口を閉じたまま天井を向きます。首がぴいーんと伸びた状態になっていますね。その状態から口を開けてください。その開いた大きさが、自然に顎が開いた時の口の大きさです。
顔が真正面を向いている時に、顎をゆるめた時と口の開きが違っていますか?鏡で確認してみてくださいね。
顎を開く為に使われる筋肉は固まって、柔軟性が失われています。 私とレッスンをすることができる方は、レッスンを通して、声の響きで硬くなった顎の筋肉を緩めることができます。
この「舌」の記事でもお伝えしましたが、声の為に使う器官の改善は、歌う声が伴って一緒に行うのが、最も効果的で無理がないのです。
顎をゆるめるマッサージ
その他にできることは、マッサージをお勧めします。最近はお風呂の湯船に浸かるのに気持ちの良い季節になってきました。その時に、顎の周りもマッサージしてあげてください。
耳の前にあるぐりぐりした骨(顎関節)の辺りから、耳の下、そして顎の先、首の両側まで。もう一つのマッサージは、口の中に親指を入れて、人差し指と中指を揃えて、口の中に入れた親指とで、頬の肉を挟みます。そして頬全体を小刻みに挟みながら移動するのもお勧めです。奥歯の後ろの方になるほど、痛くなると思います。普段殆ど忘れさられている箇所なので、痛くない強さで念入りに緩めてあげてください。
そして、お風呂から上がったら、良い香りのするクリームやオイルをつけましょう。これを習慣にしてもらうと、筋肉が柔らかくなるのと同時に、顎周りがすっきりとしてきます。
ストレスに耐えている顎
現代はストレス社会と言われています。知らず知らずの内に、言えなかった本当の思いを隠し、言われてショックだったことはぐっと飲みこんで、受けとめてしまいます。
自分では悔しい思いや、理不尽だと思えることも、なかったことにしてしまったり、何でもない事と、平静を装ってしまうこともできるのです。でも少しもなかったことになんて、なっていないんです。顎がきっちりそこに溜めているんです。
顎はいつも頑張って、あなたを守ってくれています。一生懸命働いている顎をケアーしてあげてくださいね。
顎が緊張して、固くなっていることに全く気が付いていない人は、顎を緩めてあげることができません。 ぜひ鏡の前で、自分の顎がどれくらい緩んで開くか、確認してみてください。そして、先ほどお伝えした診断法と比べてみてくださいね。
顎は意志と結びついている
固まった顎は悲鳴をあげています。顎だけに限らず、首や喉の辺りもがちがちに緊張してしまいます。ルドルフ・シュタイナーの提唱したアントロポゾフィーの考えで、三分節という考え方があるのですが、頭部もこの三分節で考えると、額は思考、目と鼻の部分は感情、口と顎の部分は意志の領域と分けることができます。
顎が固くなれば、自ずと意志も頑なになってきてしまいますね。または、意志の力が阻まれて、行動になかなか結び付かないことも。気持ちと身体は密接に結びついているのです。歌に限らず、最近自分が頑固になっているかもとか、思ったように体が動かないとか、首回り、肩などコリが抜けない人、呼吸が浅いなと感じている人は、ぜひ顎を緩めるエクササイズとマッサージをやってみてください。
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