私はフィンランドにある歌の学校(Laulu Koulu)でアンカヴァーリング・ザ・ヴォイスを学びました。
その学校はアントロポゾフィーを基盤にしていて、音楽全般を学ぶことができます。
フィンランドの学生はもちろん、その他の国からも学生がやってきて、私が在学していた時には、ドイツ、クロアチア、イギリス、イスラエル、イタリア、台湾からの学生がいました。
言語も、育った環境も違う人たちですから、価値観もそれぞれ違っていて、私が当たり前だと信じている道理も全く受け入れられないこともしばしばありました。
その度に、私は自分が知らないうちに、自分を制限している考え方があることを知ることになりました。
「あなたは自由になんでもできますよ」と言われて、
それをやろうとしても、もうそこで自分のイメージできる自由に制限を気が付かないうちにしているとしたら?
なんでもがなんでもではなく、限りがあるのです。
では、その制限に気が付く為にはどうすればいいのでしょうか?
私が歌の学校に入学した時に先生から、「あなたの行いの全てにできる限りの意識を向けてみてください。何を食べるか、何を飲むかに始まって、どこに座るか、どの言葉を選んで話すか、それらを無意識のうちに行うのではなく、意識して行ってみてください。」
私の意識を常に明るくしておくこと。
先生からの言葉には、続きがあります。
「そうやって自分の意識を明るくしておくことができるようになると、歌も変わってきます。自分が歌っている時に、無意識で歌うことがなくなります。それは、自分が何を行っているのかをよく知っている歌い手が歌うことによって、観客はその歌をリアリティーを持って受け取ることができるからです。」
日々の生活で自分が取り組むことが、歌の練習と直接関係ないことでも、歌が変化するということに、私は衝撃を受けました。
それが本当なら、やってみる価値があると思いました。
それに、入学したての私は歌が上達するためには何でもやりたいという思いも強かったのです。
やり始めると、なかなかこれが修行のようでした。
いかに普段の行動を自分が無意識に行っているのかを嫌というほど知りました。
そして、その行動の多くが、こうするのが当たり前だからとか、これは礼儀だからとか、こうするほうが無難だからとか、社会の慣習を自分にも取り入れていることが多くあることに気が付きました。
自分がそうしたいと思う慣習はそのまま引き継いでもいいのです。
ただそれに気が付くということ。
そうやって自分の意識に光をあてて明るくしていくと、段々と自分に無意識に制限をかけている事にも気が付いていきます。
歌に限らず、その他の芸術行為にも応用できることですし、それこそ、自分の日常に変化を起こすことにも繋がりますから、ぜひ取り組んでみてください。
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