本来の声を取り戻そう

Uncovering the Voice

自分の本当の声を取り戻すと人生は変容する

アンカヴァーリング・ザ・ヴォイスとは、
Uncovering=覆いが取れた
the Voice=声と訳すことができます。

この歌唱指導法はスウェーデン人のオペラ歌手であったヴァルボルグ・スヴァルドストローム=ヴェルベック(1879~1972)が
自らの声のトラブルから再生するために生まれました。

1969年 90歳のヴェルベック

彼女は長年の歌手活動で声帯に麻痺が出てしまいました。

そのトラブルがきっかけとなり、
声帯だけに頼ることなく、余分な力を抜いて、
力むことなく、体をリッラクスさせたまま、
全身を楽器のように響かせて歌える方法を模索しました。

そのプロセスを経て、ヴェルベックは
「人間の声は生まれながらにして、美しく、正しい」
という結論に達します。

自分の本来の声とは、声の欠点ばかりに着目して、
そこを矯正して自分の理想とする声に作り直す
という事ではありません。

常にそのようなアプローチ方法だと、
自分の本来の声はあなた自身にも気が付けれずに忘れさられたまま、
ずっと隠され生かされない宝物のような状態になってしまいます。

「美しく、正しい」声の響きを妨げている覆いの原因を、
そっと、そっと、その人のペースに合わせて、
一枚、一枚取り除いて行きます。

そうやって丁寧に声との関係を育んでいくことは、
自分をより良く理解していくことにも繋がります。

ヴェルベックの著書「歌声の覆いを取る」教程から一文を引用、
ここに紹介します。

「声の育成における全ての作業、
全ての努力は解き放つこと、
声が「やってくる」のを妨げている覆いを
取り除くことに他ならない。

今日の歌唱教育における根本的な誤りに出会う。
つまり人間の「声」は「形成」を必要としない。
声はそこにある。完成され、輝く存在として。
声は解放されるのを待っている。
声の解放、より正しくは声の覆いを
取り除くというべきで、
声を形成するというべきではない。」

言葉でごまかそうとしても、あなたの本心は声のトーンに現れている

例えばこんな経験はありませんか?

口では親切な事を言っているけれども、
胡散臭く感じてしまって、近づきたくないと思ってしまう人。

あるいは、
不安定な気圧のせいで時折激しく揺れる飛行機の中、
パイロットの「飛行には何の心配もございません」
というアナウンスが流れる。
その声を聞いて、大丈夫だと安心した経験はありませんか?
もし仮に、何かのアクシデントがあった場合でも、
この人だったら信頼できると思える声の持ち主もいます。

このように、私たちは言葉の意味の他に、
言葉の音のニュアンス、トーンを聴きわけて、
感覚で捉えているのです。

コミュニケーションに於いても、
自分の思いが伝わらない、誤解されて伝わってしまう、
最後まで聞いてもらえない、話しを遮られてしまう
といった経験があるとしたら、
それはあなたの声のトーンと話す内容に
ズレがあるのかもしれません。

声が小さいと言われてしまう、
何を言っているのか聞き取れない、
怒っているように聞こえると言われてしまうのは、
あなたのセルフイメージが変わることによって変化していきます。

声の覆いを外す発声法のレッスンでは、
ひとつ、ひとつの音(母音・子音)を
正しく響かせることができるように練習をしていきます。
人によって簡単に響かせることができる音と、
難しい音があります。
その難しい音に取り組みながら練習することによって、
人生で起こる様々な事にも対処できるようになります。

自分よりもいつも他者のことを優先してしまう人がいました。
一人でゆっくりできる時間があっても、
何故か罪悪感を感じてしまって、
何かしていないと落ち着かない人でした。
その人が難しい音はIとEの音でした。

Iの母音の音は垂直に伸びていく力、
縦に貫く力の作用がある音なのですが、
人間が天と地面の間にしっかりと足を着けて立つことに
重要な音でもあります。
背骨をしっかりと立たせる音でもありますし、
命を育む音でもあるのです。

そしてEの音は、Noと言える力を育ててくれる音です。
いいえのの音です。
練習を始めた時、彼女はEの音は相手を否定してしまうようで
音を発するのが怖いと言っていました。
レッスンを重ねるうちに、
自分が相手から否定されてしまうこと、
嫌われてしまうことを怖いと思っていることに
気が付かれました。

そして、「いいえ」という事は、
相手にも自分にも誠実で居られることなんですねと
考えが変わっていきました。

Eの音は、自分と相手の間に境界線を
引くことができる音でもあります。

この人の場合、
Eの音が段々と本来の響きで形成できるようになってくると、
ふらふらと左右にぶれていたIの音も安定して、
全身を貫いて響くようになってきました。

それまでうつむき加減な視線から、
遠くまで見渡せるような視線に変わってきました。

響きが本来広がって行くべきところに行かないこと、
押し留めている場合は、
意識がそこまで届いていないことを表しています。

声を出している人の全てが音の響きに
投影されて現れているのです。

過去にどんなことがあったとしても、
今現在に必要だったから起こった出来事だったのだと
思えるようになります。
そして、
未来も自分の足でしっかりと歩いて行けるようになります。

すると子育ても、家族の関係も、
仕事の関係もいつの間にか変わっていきます。

3つの響きから人間の声は構成されている

「声に掛けられた覆いを外す」発声法では、
人間の声にはそれぞれ3つの異なった
響きがあると考えています。

一つ目の響きは、
パーソナルな個人としての響きです。
頭部に集中した響きはやがて、全身に広がり、
足から頭まで垂直方向に貫いて月の光のような明晰な響です。
私たちの思考の力と結びついています。

二つ目の響きは、
明るさや深みが増した声になり、
水平方向に拡がっていく響きで、
私たちの感情の力と結びついています。
日常の生活では他者と交わることによって
様々に感情が動きます。
そして声の響きも胸の領域から横へ広がっていきます。

三つめの響きは
反射という響きで、声が自分の身体から遠く離れた所へ、
鏡に反射されて飛び散るような響きです。
これは意志の力と結びついています。

レッスンでは、
この3つの響きに対応した声と音のワークをしています。

思考・感情・意志は、体の様々な箇所と対応している

例えば、ある人にとって難しい音がDだとします。
このDの音は意志の力ととても関係があります。
それでは、Dの音は舌のどの部分で音が
形成されるかというと、舌の先の部分です。
この舌も3つに分けることができて、
舌の先は意志と、舌の真ん中は感情と、
舌の根元は思考と結びついているのです。
ですから、Dの音がきちんと形成されない場合、
意志の力が発揮されていない状態であると考えられます。

Kの音がきちんと形成されない人の場合はどうでしょう?
今度は腕で思考・感情・意志を見てみましょう。
肩が思考、肘が感情、手が意志と対応します。
「肘鉄をくわせる」の表現は、
はっきりと自分を主張する時に使う表現です。
ですから、Kの音がきちんと音に出来ない場合は、
はっきりとした物言いを避けている人、
優柔不断で決断できない人である傾向があります。

言葉ではできないけれど、歌だからこそできること

音楽にはメロディー、ハーモニー、リズムの
3つの重要な要素があります。
メロディーは思考と、ハーモニーは感情と、
そしてリズムは意志と結びついているのです。
ですから、レッスンで歌う事によって
自ずとこの3つ思考・感情・意志のバランスが
整っていくのです。

レッスンを通して、
人生の為に自分自身を日々整えていけるようになります。

無駄な心配や不安から解放されることによって、
本来の思考の力が発揮されるようになります。
自分が真にやりたいことに意志の力が発揮されて、
豊かな感情と共に行為することができるようになるのです。

人間を構成している4つの体

アトリエ・カンテレでは、
4つの構成体のバランスも取れるようになります。
このレッスンは、
私がシンギングセラピスト(歌唱療法士)としての観点から
一般の人にも役立てることができる
と思って取り入れています。

シュタイナーの思想では、
私が私であると唯一言える「自我」と
感情を司る感情体、生命を育み続ける生命体、
そして肉体があります。
肉体は私たちの目に見えているので、
一番わかりやすくて、身近に感じますが、
後の3体は目に見えないのでわかりにくく、
把握するのは難しいと思います。
レッスンでは、それぞれの概念を教えています。
そして、目に見える形として
自分の身体にどのように表れているかもお伝えしています。

一番顕著に表れるのは、睡眠の状態です。
夜はきちんと眠くなって、
ぐっすりと眠ることができているか、
そして朝は清々しく目を覚まして
起床することができているかです。
これはだれでも観察することができます。
睡眠を質の良いものにすることができると、
昼間の活動にも良い影響を及ぼすことができます。
自分の睡眠のコンディションから、
4つの構成体のバランスを取る為に、
日常生活でどこに注意すればいいかというコツを
お伝えしています。

本を読んだだけでは難しくて、
よく理解できないと言われるシュタイナーの思想が、
生きた知恵としてあなたの人生に活用できるようになります。

目には見えない響きの体

レッスンを積み重ねることによって、
目には見えない響きの体を作っています。

自分の肉体から響きの体を
意識の力でどこまでも広げたり、
伸ばしたり、縮めたり、狭めたり、
自由自在にできるようになります。
声のボリュームを調整するのにも、
この意識を空間いっぱいに広げればフォルテになりますし、
自分の体の近くに近づければピアノになります。
でもこれは声のボリュームだけではなく、
この意識を自由自在に動かすことができるようになると、
人と関わる場合にも、相手に対して、
どのくらい自分の響きの楽器を広げればいいか、
狭めればいいかがわかります。
話すべきこと、沈黙したほうがいいこと、
やってあげたらいいこと、
やってあげてはいけないこともわかってきます。

声が変わる=本来の私の力が発揮される

「声の覆いを取り外す」発声法は、
声だけでなく、人生をも変容させてくれる力があります。
レッスンを通して、自分の内を見つめると、
越えなければならない課題が次々と見つかります。
それを一つ一つ、根気よく、あきらめずにやっていると、
声が変わってくるのです。

本来の自分の力が発揮されるようになります。

歌のレッスンで取り組んだことが、
そのまま人生に起こる出来事にリンクしていきます。

この「声の覆いを取り外す」発声法は、誰でもが簡単に、
手っ取り早くは取り組めないものだと思います。
性急に私を変えたい、変わりたい、こうなりたいと思う事は、
人間だったら当たり前に思う事だと思います。

でもいつまでもその思いに縛られていると、
本来の声は残念ながら現れ出てくれません。
もちろん、最初はそういう願望、
理想の姿を目標に始めても良いと思います。
でもそれを唯一つのゴールに設定してしまうと、
なかなかその先に進むことができなくなります。

本来のあなたの声は、
あなたのエゴの下に隠されたままだからです。

その思いに捕らわれることなく、
手放して、やってくるものを全て受け入れて、
自分を信頼して任せることも大切です。

それは、レッスンを通して、
客観的に聴くことを身に付けたあなたの耳がやってくれます。

「それは、あなたのエゴが、
利己的な思いだけを満足させている声だよ」と耳が教えてくれます。

あるいは、「その声こそが、何にも縛られない、
自由に響くあなたの声だよ」と教えてくれます。

それを聞き分けられるようになるには、
忍耐と辛抱とたゆまぬ努力が必要です。

でもいつもユーモアを忘れずにです!

真摯に学びながらも、
喜びで溢れるレッスンを
アトリエ・カンテレでは大切にしています。

あなたらしい人生をありのままに生きる方法を
学びたいと思われるかたは、
どうぞアトリエ・カンテレのセッションにおいでください。

アトリエ・カンテレで提供しているセッションの詳細は下記でご覧いただけます。