トゥーリとバスステーションで別れた後、私はポルボー行きのバスに乗りこみました。ヘルシンキからは1時間くらい離れた、古い町並みが残る小さな港町です。
3年ぶりに会う友達、アンナ=カーリナとマッティにこの町で待ち合わせをしていました。クリスマスに彼女のお母さんの家に招待してくれたのです。でも、その前にポルボーを一緒に観光しようという話になりました。
約束の時間より1時間遅れて、私たちは待ち合わせの場所で会いました。アンナ=カーリナは赤いニットの帽子を被っていました。彼女の透き通るような白い肌と、柔らかな金色の髪にとてもよく似合っています。その後ろから、ひょろっと背の高いマッティが笑いながら現れました。彼はいつも飄々としていて、私は、ムーミン谷のスナフキンをいつも思い出します。そして、アンナ=カーリナのお母さん。今回初めてお会いしました。
私がたどたどしいフィンランド語挨拶をすると、英語で答えが返ってきました。とても綺麗な英語を話されます。長い間銀行に勤めていらしたそうで、英語はお仕事に必要だったとのこと。
降りしきる雪の中、旧市街に集まっている小さなお店を見て廻り、アンティークなカフェでお茶を楽しみました。今夜の夜の献立の鮭を途中で買って帰るので、私たちは早めにポルボーの町を後にして、コトカに向けて出発しました。
コトカはフィンランドの南に位置する港町です。お母さんの家は、町の郊外の住宅地にありました。平屋のテラスハウスで、二つのベットルーム、居間、キッチン、書斎、サウナ室、洗濯室のある居心地のよい、清潔な家でした。
途中の魚屋さんで買った大きな燻製の鮭と茹でたジャガイモにアボカドのクリームソース、そしてサラダの夕食を頂きました。フィンランドの食事は素朴だけれど、どれもおいしいものばかりです。
食後はみんなで居間に集まって、話をしました。3年ぶりに会ったので、話は尽きません。私の為に書斎に作ってもらったベットに入ったのは、夜中の1時を過ぎていました。
翌朝は、キッチンからの物音で目が覚めました。時計を見ると、もうすでに11時を過ぎています。お母さんが食事の準備をしていました。「ああ!こんなに遅くまで寝てしまって。。。」と言いながら起きていくと、「お休みだもの、寝たいだけ寝ていていいのよ」とお母さんは言いました。アンナ=カーリナとマッティもまだ起きてきません。人の家に泊めてもらって、朝寝坊をするなんて、なんて恥ずかしいことをしてしまったのだろうと、私は思っていたのです。
お母さんを手伝って食事の準備をしている間に、二人も起きてきました。ポリッジに牛乳、ライ麦パン、チーズ、ハム、きゅうりとトマトのスライスしたもの、ヨーグルト、ゆで卵。こんなにいっぱい食べられるかしらと思っていたのですが、みんなおいしく食べてしまいました。もう食べ終わった時には、午後の1時をまわっていました。
午後はアンナ=カーリナとマッティと共に、クリスマスの買い出しに行きました。お店は24日の午後から26日までお休みになってしまうので、その間の買い物をしなければなりません。
スーパーマーケットの駐車場は沢山の車でいっぱいで、駐車するところがなかなか見つかりません。何回もくるくると駐車場の中を廻って、やっと駐車できました。店の中も、大きなカートを押したひとで満員です。みんな手に買い物リストを持って、必要な物を次々とカートの中に入れていきます。
私たちはカートを缶詰の棚の前に置いて、3人で手分けをして、必要な物を探しに行き、カートに入れに戻ることにしました。そうしたほうが、人ごみの中、カートを押して回るより効率が良いと考えたのです。
1時間も買い物に費やしました。車のトランクの中、後部座席まで食料で埋め尽くされました。これで準備万端。お腹も空いたし、家に帰ろうとした途端、アンナ=カーリナが重大なことに気が付きました。「肝心のクーシプーを買わなくっちゃ!!」クリスマスツリーを買い忘れていたのです。でももうツリーを乗せるスペースが無いので、一度家に帰ることにしました。
夕食後、アンナ=カーリナとマッティはクリスマスツリーを買いに行きました。私は家でお留守番。一緒に行きたかったのですが、私が後部座席に座ってしまうと、ツリーを乗せられなくなってしまうのです。
買ってきたツリーは3メートル近くもあるでしょうか?部屋の天井に木のてっぺんが付きそうです。
一番下の幹の部分を平行に鋸で切って、クリスマスホルダーに立てます。クリスマスホルダーとは、直径30センチほどの円盤型の真ん中に、同じ鉄製の筒が直角に付いています。その筒の中に木の幹を差し込んで支えます。
色々と迷いましたが、ツリーの場所は今の大きなソファーの隣に落ち着きました。アンナ=カーリナとお母さんが戸棚からクリスマスの飾りを出してきました。赤い帽子を被ったトントゥ人形たち、窓に下げるステンドグラスでできた天使、金の糸で編まれた大きな星たち等。家の中がそれらで飾られていきます。クリスマスの雰囲気が家の中にやってきました。そして、ツリーからは青々した清らしい香も漂ってきます。
クリスマスツリーの飾りつけは、明日の24日にやるそうです。私も手伝うので、明日が楽しみになってきました。
つづく