フィンランドの人々は夏の休暇を湖の側のコテージで過ごします。
普段の街での暮らしは機能的、かつ合理的に過ごしている彼らですが、コテージは必要最低限の設備です。
同じような生活をあえて避けているようにも思えます。
電気は通っていますが、水道を引いている所はめったにありません。
大抵の家に井戸があり、必要な水はそこから汲みます。
台所にもシンクがあるだけで蛇口が無いので、井戸から大きなポリバケツに水を貯めて、調理用、洗い用などに無駄が無いよう上手に使います。
毎晩入るサウナにもお湯が出る水栓やシャワーが無いので、これもまた大きなドラム缶の様なところに水を貯めて、その下には薪をくべて火を起こし、体を洗うためのお湯を作ります。
そして、水を貯めてある容器から柄杓ですくって、洗面器にお湯と水を混ぜて適当な温度にして、髪や体を洗います。
1~2週間の休みの間、毎日この作業をするのですが、彼らたちはこの不便な生活を逆に楽しんでいるようです。
トイレも母屋には付いていません。
外にトイレ小屋があり、もちろん水洗ではありません。
用を足したら、おが屑を振り掛けておきます。こうすると臭いもなく清潔に保てます。
コテージの周りには湖と森だけ、釣りに行ったり、森に入って夏の盛りのブルーベリーを摘みに行ったり、湖にせり出している桟橋に寝そべって本を読んだり、他にもさまざま、やるべき事より、自分のやりたいことに時間を使って過ごします。
起きる時間も食べる時間も自分の欲求のままに。
夕方サウナから飛び出して、桟橋の端まで一気に走りぬけ、そのまま湖にポーンと飛び込みます。
お隣のコテージは林の向こうに隠れて見えないので、裸のままでも気にする必要はありません。
手を思いっきり開いて、仰向けに水に浮かぶと、夏のいつまでも沈まないおひさまが、祝福してくれているようで嬉しくなるのでした。
アントロポゾフィー歌唱療法士 平井久仁子