前回の記事では、
人間の声には生まれた時から
3つの響きを持っているという事をお伝えしました。
覚えていらっしゃいますか?
①体を上下に貫く響き(響きの誘導)
②体から外へ拡張して広がって行く響き(響きの拡張)
③体外に拡がった響きと体内の響きが合わさり
反射される響き(響きの反射)
そして、3つの響きが自然な形で
声に現れていない場合が
残念ながら多いという話もしました。
↓まだお読みでない方は、下記からどうぞ!↓
3つの響きの練習は、
其々に特化したエクササイズがありますが、
この練習をするにあたって、
共通する大切なことがあります。
それは、耳の使い方です。
あなたは歌っている時に、
どこに耳を合わせて聴いていますか?
そしてどんなふうに聴いていますか?
多くの人が歌っている時に、
もっとも注意して耳を合わせて聴いているのは、
自分の声が鳴っている最中の時ではありませんか?
聴こえる音として(声として)
自分の耳に聞こえている時にもっとも聴いている。
これって世間一般では当たり前のことですが、
アンカヴァーリング・ザ・ヴォイスでは違います。
もちろん、ここを聴くことも大切ですが、
もっと聴く必要がある大切な所があるのです。
それは、
自分が声を鳴らそうとする前。
そして、
声を鳴り終わらせた後。
えっ!そこの2つの所って、音が(声が)無いでしょ!?
そう思ったあなたは、
声は自分が作り出した物と考えているのではありませんか?
声は単に空気が体の中に入ったり、出たりして、
その時に声帯が震えて鳴るものとしての概念しかありません。
それはあまりにも物質的な考えではありませんか?
声はそうやって出されたものだけではなくて、
声にはその人の精神性や生命力が含まれているのです。
人間の声には、
楽器や機械の音とは違う要素が含まれているのです。
響は音が鳴らなければ聞こえるものとして現れ出ません。
だから音と響きは同じものと混同して考えられていますが、
音と響きは別の世界のものです。
だからこそ、声を鳴らす前は、
その響きの世界に耳を澄まして、
その響きの世界から
自分の声の響きを誘い出す必要があるのです。
響きの練習をする時は、自分を開いて、
あるいは、
できる限りニュートラルな状態にして、
響きを受け入れてあげます。
色々と騒がしい
自分のエゴを静かにさせる必要があります。
(ここでいうエゴとは、こんなふうに歌いたい!綺麗に歌いたい!ああうまく歌えなかった!なども含まれます。)
私がよく思い描くイメージは、
透明で、波立っていない穏やかな水面です。
自分をそんな状態にして、耳を合わせます。
すると、まだ声にならない空間から、
自分の声が聞こえる瞬間がやってきます。
エゴで心が一杯になっていると、
鳴る前の声を聞き出すことができません!
それが聞こえたら、実際に声にして鳴らす。
そして、今度は、鳴らしている声を手放して、
その手放した声がどのように空間に響き、
解き放たれていくのかを聴く。
丁度よいタイミングの時に手放してあげられた声は、
とてもよく響いてくれます。
そうしてあげると、
声になった時の最初の響きも変わりますし、
鳴り終わった後の空間にも響きが満ちます。
鳴り始めの声は、
唐突に声が始まったような響きではなく、
豊かな響きがもうすでにそこにあったような響きになります。
そして、歌い終わりの響きは、
実際の声は鳴っていないけれども、
残響のようなものが幾重にも空間に満ちています。
花の姿は見えなくても、
その花の芳香が漂っている。
そんな響きです。
金木犀や沈丁花などイメージしてもらったら、
分かりやすいかなと思います。
この間もレッスンしている時に、
それに気をつけて歌って頂くと
とたんに響きが変わられて、
歌っている本人がびっくりされていました。
もう本当に、ちょっとした意識の違いなんです。
そこに気が付くか、気が付かないかの差で、
顕れて出るものが違ってきます。
アンカヴァーリング・ザ・ヴォイスでは、
耳の使い方を徹底的に学びます。
すると、聴き方を培われた耳は歌ではない場面でも
活躍するようになります。
人の話を本音か建前か聞き分けられたり、
この場面では口を挟まない方がいいなとか、
ここでは意見をはっきり言った方がいいとか、
人間関係のあらゆる場面で応用できるようになってきます。
今回紹介したような耳の使い方をして頂くと、
人間の声には精神性や生命力が含まれていることを
実感して頂けると思います。
現代では残念ながら、
物質的なただ消費されるだけの声で歌う人が大半です。
でも精神性や生命力が宿る声で歌ったり、
話したりすることができれば、
自分を整えることもできるのです。
そして、その声で語り、歌う事ができれば、
聞いてくれる人達の魂への贈り物にもなるのです。
そのような声で語り、
歌える人が多くなることを願います。
『歌を通して心と体を整える声の専門家』
シンギングセラピスト(歌唱療法士)平井久仁子
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