ヴェルベックは歌っている時の自分の声を「まるで他人が歌っているのを聞いているように客観的に聞くこと」と言っていました。ですから、Uncovering the Voiceの学びは、「聞くこと」の学びでもあります。「見ること」にもその人特有の見方の癖がありますが、「聞くこと」にもそれぞれの癖があります。
普段、どのように自分の声を聞いていますか?また、どのように他者の話を聞いているでしょうか?School ofUncovering the Voiceのクラスでは「自分の耳をどこに合わせて聞いているか」について意識的になって頂いて、「聞くこと」の練習を行っています。
どのように聞いているかの気づきがやってきて、そして、それを身体の感覚を感じながらまた聞き続けていくと、今まで聞こえてこなかったところにまで耳が開いていきます。「静かに集中して聞こうとすればするほど、声の方から開示してくれる」と、ヴェルベックは言っています。静かにというのは、自分の主観的な思いを脇にそっと置いて、自分の中心に居て、そして同時に、開いているような状態です。
自分の内側がうるさかったら、声が開示してくれていることにも気が付かないで聞き逃してしまうと思います。これは、他者の話を聞く時にも同じ事が言えます。他者の話を聞いている時に、自分が共感できることがあると、自分事のように聞いてしまうことがありますよね?
「相手の話を共感を持って聞くこと」と言われていますが、
それはもしかしたら、相手の話を聞きながらも自分のことを相手に投影して聞いているだけかもしれません。それでは、純粋に他者の話を聞いているということになるでしょうか?
「純粋に聞くこと」それに至る道は、すぐには至れないかもしれません。でも、時間をかけてでもそれに取り組むことは
大きな喜びでもあります。
アントロポゾフィー歌唱療法士 平井久仁子