また新らしく生まれ変わった声を聞かせてもらいました。
本当は、変わったのではなく、その人本来の声が現れ始めたと表現した方がより正しいと思います。
その方は、音を伸ばして歌う際に力まなくてもよいのに、余分な力を無意識にかけてしまう癖があって、現れ出る声には震えが出てしまっていました。
無意識に行われているので、まずそこに気が付いてもらう事から。
そして、その原因がどこにあるのかを探していきました。
舌や、下顎、首、胸、お腹、歌うために必要な器官や筋肉の力みを無くし、柔らかくしていく練習を行いました。
身体の力んでいる所に着目して、そこに働きかけるエクササイズを行ってきましたが、でも、そこだけに働きかけているのではなかったのです。
レッスンでは、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ファ、ミ、レ、ドという音階を半音ずつ移調して歌ってもらうのですが、必ず、4音目と5音目になると今までと違った詰まったような響きになります。
音程を下げて、調を変えても同じ現象がおこります。
本人も気が付かれていたので、1音目から3音目までにやっていることと、4音目から5音目にやっていることに違いはあるか、意識してもらいました。
そして、私に分かるように説明してもらえないかと頼みました。
「4音目と5音目になると、すがるもの、支えになるもの、土台になるものが必要に思えて、1音目から3音目までの力がいらなくても声がでる状況に不安を覚える。」とのことでした。
では、その不安な気持ちを乗り越えるために、1音目から3音目までの状況を4音目でも5音目でも再現するようにやってみましょうと提案しました。
「なんのために頑張っていたのだろう?頑張っていなければ、やっている実感がしなかったからだと思う。でも頑張りを無くせば無くすほど、声は自然にでるんですね。」
みずから気が付かれ、また一つ覆いが取り払われました。
それはそれは輝くような歌声でした。
私はその場に立ち会わせて頂いて、声を聞かせて頂く事をいつも感謝しています。
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