シンギングセラピスト(歌唱療法士)平井久仁子です。
歌う人にとって、歌う前にコンディションを整えることに注意が向うのが多いと思いますが、演奏後のコンディションを整えることには、あまり注意を払われないのではないでしょうか?
コンサートや日々の練習で歌った後に必ず行ってほしいと思うことがあります。
今回お伝えする内容については、あまり語られることはないと思われますが、でも、これを行うことで、心も体も健やかに保たれます。
では、お伝えしていきます。
演奏後の心のコンディションの整え方編
自分の力で試行錯誤を繰り返しながら創っていった曲を実際に観客の前で披露し、そして、コンサート終了後には演奏者は自身の演奏について客観的に良かったところ、改善すべきところを分析します。
そして、そこで見つかった課題を次の演奏に生かすべく練習に取り組まれると思います。
その時のポイントは客観的に!分析すること。
好意的な批評も辛辣な批評も同じように受け取ること
自分の演奏が思い描いていたようにいかなかったり、練習ではできていたのに本番では失敗してしまったかもしれません。
でも、そんな場合でも必要以上に自分の演奏を批判的に捉えることはしなくてよいと思います。
そして、観客からもコンサートの感想を頂きますね。
おおむね好意的な感想はコンサート終了後に観客から直接伝えて頂けると思います。
批判的な感想は演奏者本人に直接伝えることは、あまり無いと思いますが、人を介して耳に入ってくることはあるかもしれません。
ここでのポイントも、好意的な感想も、批判的な感想もどちらも客観的に受け取るということです。
自己承認欲求のために歌っているのではない
『甘美な賞賛の言葉にも、辛辣な批評の言葉にも一喜一憂することなかれ。どちらの言葉も平等に受け取り、淡々と自分の道を進みなさい。そうすれば、観客に媚びる事もなく、怯えもせず、自分の音楽を奏でることができます。』
上記の言葉は、私が恩師から卒業のコンサートの時に頂いた言葉です。
観客からの批評に必要以上にこだわると、作品のできにこだわるのではなく、作品がどのように他人に評価されているのかばかりに意識が向いてしまいます。
この作品を歌いたいから歌うのに、認めてもらいたいから歌うようになってしまうのです。
歌い手に限らず、他の芸術に携わっている人や、物つくりをしている作家、またその他の人にもあてはめて考えることはできると思います。
日常の生活においても、他人から認められたいがために、行動していることはありませんか?
コンサート終了後に頂く、「良かったよ!」という言葉には、本当に嬉しくて、毎回その言葉を頂けるようにと、ついつい期待してしまいます。
批判的な評価のなかには、自分の演奏のヒントになるような言葉もあります。だから、それは参考にしてください。
でも、ただ感情に任せての批判だったとしたら、それを真に受けることはありません。
どうぞスルーして、自分をしっかり守ってあげてください。
そして、もしもそういった批判の言葉を受けて、怒りや恐れや不安な気持ちが湧いてきたら、自分をほっとさせることをやってあげてください。
感情に支配されそうになったら
自分の気持ちを書いてみることをお勧めします。
自分の頭のなかにくるくると巡る考えや、もやもやと溜まっている感情を書くことによって、自分から離して客観視できるようになります。
最初からポジティブな感情もネガティブな感情も平等に受け入れようとすると、心が置き去りにされてしまいます。
思考で感情を抑え込もうとしても、心は暴走するばかりです。
なので、ここは少し練習が必要です。
時にはまるで修行のような道ではあるけれど、より良い創作の為に、私も淡々とやっています。
演奏後の体のコンディションの整え方編
さて、今度は演奏後の体の整え方についてお伝えします。
先ほど心のこもっていない、批判的な言葉を受けてしまった場合には、自分自身をほっとさせて守って下さいとお伝えしましたが、その方法も合わせてお伝えします。
演奏後の自分の気分を観察してみる
歌に限らず、芸術行為そのものには、日常の意識状態を超えて、非日常の意識に創作者を誘います。
ライブやコンサートを終えた時のご自分の気分を思い出してみてください。
充実感、達成感、幸福感、一体感、その他幾つもの気持ちが溢れていませんか?
その気持ちを味わいたいからこそ歌っているという人もいると思います。
それは素晴らしいことですよね。日常の生活では味わえないことですし、魂の栄養にもなります。
でも、その非日常に舞い上がって、高揚している意識をきちんと自分の体に戻してあげる事もとても必要です。
エネルギーを循環させるということに視線を向けてみると、気持ちが高揚したからエネルギーがみなぎって、パワー全開になるわけでもありません。
演奏に限らず、パーティーなどに参加した時も、華やかな場所の雰囲気に気分が高揚したりしますよね。でも帰宅すると、物凄く疲れてしまったという経験はありませんか?
苦しみや、悲しみといったネガティブな気分もエネルギーがたくさん奪われますが、すごく大きな喜びを味わっているときも、エネルギーはたくさん使われているのです。
演奏後に行う4つのシンプルなこと
それでは、実際に演奏後にやって頂くことをお伝えします。
これを行うと、自分のエネルギーが不足することが無くなり、バランスを保って日常生活を過ごすことができるようになります。
その為に行うことは、とてもシンプルな事です。
- 冷たい水で手や顔を洗う。
- 一人になれる所で静かに集中して、自分の体を触り意識を体に置く。
- 散歩に出かける。
- 体を動かした労働をする。(掃除や庭掃除など)
とにかく、自分の体に意識をもってくることに専念してみてください。
無意識で行っている例として、「食べること」もグランディングの一つの方法ですが、食べすぎてしまうと健康に影響するので、上記に挙げた方法を試してみてください。
こんな簡単な方法でいいの?と思うでしょう。
これを行うと、自分の軸に戻ってくることができます。
そして、しっかりとグランディングすることができます。
また、上記の他にアロマオイルなどの香を嗅いでみることや、ゆっくりと入浴するなど、自分に合った方法を見つけてみてください。
まとめ
芸術家は実務的なことは何一つできないとか、夢想家だとか、浮世離れした人などが世間一般に持たれているイメージではないでしょうか?
でも、これからの時代は芸術に携わっている人は、創造的な世界とも繋がりつつ、日常の世界ともバランスを持って生きることが大切だと私は思います。
フィンランドの歌の学校で勉強をしていた時も、歌うことだけをしていては、実生活にバランスを取ることが難しくなるという学校の方針で、学生には実務的なことをきちんとやるように指導されていました。
各自が担当する場所を決めて、毎日学校の清掃を行いました。また、月に一度は生徒全員で校庭の掃除などを行いました。
精神面でのバランスも必要なことです。
人からの評価に自分の心が振り子のように、超ポジティブな気持ちから、超ネガティブな気持ちに振り切れているような精神状態では、心が平静に保たれることはなく、エネルギーはどんどん枯渇してしまいます。
また歌う時の精神活動は、普通の生活の精神活動とは違っています。
しっかりと演奏が終わった後は、体に意識を戻してグランディングしましょう。
そして、何よりもそのような生き方の方が、体も心もより健康的なのではないかと思うのです。
今回お伝えした、心と体のコンディションを整える方法を参考にして頂ければと思います。
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