「どうしたら自分の本来の響きある声で歌えるようになりますか?」
とよく質問を受けます。
その答えとしては、
何回も練習することだと思います。
もう本当に、それしかありませんし、
それに尽きると思います。
私と月に一回、又は2回レッスンをしたからといって、
それだけで響きのある自分本来の声にはなりません。
わたしとのレッスンで覚えたエクササイズを
地道に自宅でも練習する事です。
私は歌の学校の学生の時に、授業の他に、
1日5~6時間練習をしていました。
先生からは、
「これが自分の本来の声だと分かるようになるには、
7年はかかる」と言われていました。
私は本当に自分本来の声を求めていましたし、
その声に到達してみたいと強く思っていたので、
毎日、毎日、淡々と練習をする日々を楽しく思っていました。
現在、アトリエ・カンテレで学んでいる方たちは、
学生だった頃の私のように、
1日5~6時間も練習のために確保するのは
無理があると思います。
自分の仕事や家族と過ごす時間も必要です。
なので、私は1日に10分、又は20分の短い時間での
練習をお勧めしています。
練習をすることに慣れていない人には、
料理をしながら、掃除をしながらなど
ながら練習からして頂いています。
この目的は、声を出す時間を多くして頂きたいからです。
絵が上手な人は、
才能があるから絵が上手いだけではないと思います。
時間があれば、何万回も絵を描いたからだと思います。
1日の内で声を出す時間が増えてきたら、
ながら練習だけではなくて、
誰にも邪魔をされない静かな環境、
そして時間を確保して練習をしてください。
この時間は絶対に必要です。
声には見えない世界と見える世界を
仲介するという役目があります。
聞えない世界を聞こえる響きにしているのです。
ながら練習では、その練習ができません。
普段自分が使っていない感覚を開き、
感じるための練習だからです。
自分が何をしているかを知らないで
ただ闇雲にバットを千回降っても意味がないのと同じです。
バットのどの部分を
どんな力加減で握っているのか、
そして、バットの先端がどのような軌道を通っているのか、
球が飛んでくる方向に対して、
自分の体はどのように立っているか、
体の向き、腕の位置、腰の位置、脚の開き具合など
こんな風にして歌の練習をしている時も、
自分が行っていることを観察します。
1日の内に10分でもいいので、
静かに座って、練習をしてください。
もし、1日の終わりに、今日も練習が出来なかったと
自分を責めたり、後悔していたら、
どうしたら、10分の練習時間が確保できるかを
考えてみたらいいと思います。
私はクラシックギターを習っていますが、
毎日ギターに触れられるように、
ギターをケースに入れないで、
そのまま出しています。
洗濯機が動いている間、
お風呂を沸かしている間、
ご飯を蒸らしている間、
仕事が終わった後など、
「今、時間がある!」と
思った時に、すぐ弾けるようにしています。
そうやって10分くらいの短い時間が4回集まれば、
トータルすると、1日30分~40分は練習ができます。
そして、30分以上のまとまった時間が取れて練習ができれば、
ハッピーな気分になれます。
ここでご紹介したのは、
ほんの一例だと思って、
自分に合った方法を見つけてみてください。
自動車を運転できるようになるにも
楽器が弾けるようになるのも
外国語が話せるようになるのも
出来ない物を出来るようにするのは
練習が必要です。
そして、そこには必ず通過するプロセスがあります。
1)意識しても出来ない段階
(アクセル、クラッチをどのように動かせばいいか知っていても
エンストする)
↓
2)意識すれば出来るようになる段階
(アクセル、クラッチをどのように連動させればいいか意識すると
エンストしない)
↓
3)意識しないでも出来る段階
3)の段階になれば、
助手席に座っている人と話をしながらでも
自動車を運転できる状態になります。
歌の場合も同様です。
どうぞ大切な時間を
自分の練習の為に作ってあげてくださいね!
歌唱療法士 平井久仁子