アントロポゾフィー医学
シンギング・セラピーという言葉を聞いて、
何を思いますか?
シンギングだから、
歌を歌うセラピーかな?と想像されると思います。
でも一体どんなことをどんなふうに行うのかしら?
そして、歌うことによってどう作用するのかしら?と
疑問に思う事でしょう。
今日は、シンギング・セラピーについて、
お伝えしようと思います。
私が行っているシンギング・セラピーは
アントロポゾフィーの考えを基にしています。
アントロポゾフィーとは、
ルドルフ・シュタイナーによって提唱されました。
日本ではシュタイナー教育として
より認知度か高いと思われますが、
その他にも医学、薬学、農業、経済、治療教育、
芸術、建築など様々な分野があります。
アントロポゾフィー医学は従来の医学を土台にして、
それを拡張させて患者さんを治療します。
人間を肉体だけの存在としては捉えていません。
ですから、投薬や手術などの
処置だけの治療では終わりません。
患者さんの精神面や心のありようまでを
見つめて治療を行います。
アントロポゾフィーの芸術療法
アントロポゾフィー医学では、
医師の診察の他にも必要であれば、
芸術療法を患者さんに受けて頂きます。
アントロポゾフィーの芸術療法には、
絵画造形療法、言語造形療法、音楽療法、
歌唱療法(シンギング・セラピー)、
運動療法(オイリュトミー)などがあります。
現在、歌唱療法士は日本ではまだ私一人だけです。
療法に芸術が使われる場合、
作品の美しさや完璧さを求めてはいません。
芸術行為のプロセスそのものが
治癒をもたらす作用があると考えています。
ですから、シンギング・セラピーの場合も
曲を上手に美しく歌うことを
最も重要な目標にはしていません。
患者さんが音楽という芸術に取り組むことによって、
おのずと今ここで活動しているのは自分であること、
そして、声の現れ方には自分が直接に
創造していることを自覚していきます。
そして、それをいかようにも自分で生み出すことができることを
学んでいかれます。
自分で歌うこととヒーリングミュージックCDを聞くことの違い
最近では音楽療法も少しずつ認知を得てきましたが、
日本ではまだ音楽療法が正しく理解されていないように思えます。
音楽を聞くと、リラックスして神経の興奮が収まったり、
安眠できるといったことを聞く機会も
多くなってきたのではないでしょうか。
それらはヒーリングミュージックというジャンルで
CDも販売されています。
それらの音楽を否定はしませんが、
流れてくる音楽だけを聞くだけでは
患者さんは受け身なだけで、
積極的に音楽という芸術行為に関わってはいません。
またアントロポゾフィーの芸術療法では、
患者さんと療法士との治療という関係性の中で
芸術活動を行い、
求められる効果を生じさせなくてはなりません。
音楽療法とシンギング・セラピー(歌唱療法)の違い
シンギング・セラピーも
音楽療法の一部と考えられますが、
そのアプローチ方法は違っています。
シンギング・セラピーの場合は、
患者さんには楽器を演奏してもらうことは、
まずありません。
療法のメインは患者さんに
声を出して歌って頂きます。
それも、既存の曲を歌ってもらうこともほとんどなく
(もちろん例外はあります)、
療法士は目の前にいる患者さんに
必要な母音(A E I O U など)と
子音(B C D F G K ...その他)を選びます。
そして、選んだ母音、子音を
簡単なメロディーにのせて歌って頂きます。
喘息の患者さんであるから、
この母音と子音というように、
最初から最後まで決まったメニューで
エクササイズを行うということはしません。
喘息という現れている症状は
同じかもしれませんが、
人間は一人、一人違う存在ですから
病名だけで一括りにすることはできません。
シンギング・セラピー(歌唱療法士)の診断方法
アントロポゾフィーでは人間を多面的に捉えます。
●人間の4つの構成体
1肉体
2エーテル体(生命体)
3アストラル体(感情体)
4自我
●人間の3つの構造
1思考(頭部人間・神経感覚系)メロディー
2感情(胸部人間・呼吸心拍系)和音
3意志(下部人間・代謝四肢系)リズム
●人間に備わっている12の感覚
(1触覚、2生命感覚、3運動感覚、
4平衡感覚、5臭覚、6味覚、
7視覚、8熱感覚、9聴覚、
10言語感覚、11思考感覚、12自我感覚)
療法ではその内の肉体にもっとも身近な感覚である
『触覚』、『生命感覚』、『運動感覚』、
『平衡感覚』に着目します。
●4つの臓器
肺(思考、肉体、地のエレメント、重力との関係)
肝臓(行為、意志、エーテル体、水のエレメント)
腎臓(魂の営み、アストラル体、空気エレメント、空間形成)
心臓(内なる支えを与える、自我、熱エレメント、
体温調整、汗、松果体)
●12の体質(主に子供の診断に用います)
1大きな頭タイプ
2小さな頭タイプ
3宇宙的タイプ
4地上的タイプ
5ファンタジーゆたか
6ファンタジー乏しい
7てんかんタイプ
8ヒステリータイプ
9硫黄過多タイプ
10硫黄欠乏タイプ
11躁的タイプ
12弱められた感覚タイプ
歌唱療法では、
上に記した全てを通して、
患者さんを診断します。
例えば、3つの構造から患者さんを診た場合、
思考に偏りすぎて、
まったく感情を感じることができない状態であるとか、
感情ばかり優位になってしまって、
突発的な行動ばかりしてしまうといったように、
3つのそれぞれのバランスが
極端に崩れている場合に、
病気として症状が現れると考えます。
療法が始まる前に、
患者さんに様々な項目について
質問をさせて頂いています。
それは、どのようなバランスに
現在患者さんがなっているのかを
把握するための質問です。
母音と子音
先ほども既存の曲を歌うのではなく、
療法士が患者さんに必要な母音と子音を選ぶとお話しました。
それでは、どのようにその母音と子音を選ぶのでしょうか?
まず、母音は人間の臓器と惑星に関係があり、
子音は各体の部分と12星座に関係があると
アントロポゾフィーでは考えています。
惑星と母音と内臓の関係
火星 E 胆嚢
水星 I 肺
木星 O 肝臓
金星 A 腎臓
土星 U 脾臓
太陽 AU 心臓
月 EI 脳・生殖器
12星座と子音の関係
牡羊座 W 頭
牡牛座 R 喉
双子座 H 腕
蟹座 F、V 息、呼吸
獅子座 T,D 心臓、肺
乙女座 B,P 腹、腸
天秤座 C,Ch おしり
蠍座 S,Z 生殖器、背骨、尿道
射手座 K,G 腿
山羊座 L 膝
水瓶座 M 脛
魚座 N つま先
患者さんのアンバランスな部分を
統合するために必要な母音・子音を選び出して、
それを声に出して歌って頂きます。
シンギング・セラピー(歌唱療法)がもたらす作用
魂的作用として
*クライアントが芸術的な行為を行うことによって、
すでに持っている意志的衝動を感じとること。
*自らの表現の可能性を広げる事。
*頭だけで理解するのではなく、
感情を伴って情緒的に理解し、行為を行えること。
*視野の転換。
*新たな発見、現実を感じる事。
*快方への希望。
体的(生理的)作用として
*呼吸が落ち着く。深い呼吸を行える。
*心拍、脈拍のリズム化。
*筋肉の弛緩作用。
*生命力の構築、強化。
*体温を高める。
*身体の安らぎ、リフレッシュ。
などが挙げられます。
療法を行うにあたって私が大切にしていること
ここまで色々とアントロポゾフィーの
知識を記してきましたが、
実際に療法を行う時には、
それらの知識を脇に置くようにしています。
そして、私は患者さんの中に
治癒に向かう力があることを信じて
療法を行わせて頂いています。
長い文章になりました。
最後までお読みくださりまして、ありがとうございました。
私が行う療法に真剣に興味がある方の為に、
書かせて頂きました。
下記のページでもシンギング・セラピーについて書いています。
▼
https://kantele-voice.com/about/
日本アントロポゾフィー医学のための医師会ホームページ
▼
[template id="282"]