シンギングセラピスト(歌唱療法士)平井久仁子です。
最近レッスンにお越しになる方に
立て続けにご質問を頂きました。
「演奏しているときに緊張してしまいます。
それを克服するにはどうすればいいでしょうか?」
歌や楽器の演奏に限らず、
大勢の人の前でスピーチしなければいけない等、
緊張する場面はありますね。
だから誰でも経験していることだと思います。
かつての私もとても緊張していました。
フィンランドの歌の学校では、
毎年学期の終了時にコンサートを催すのですが、
そのプログラムを組む時、
私は必ずトップバッターにしてもらっていました。
他の学生からは
「トップバッターを志願してくれて、ありがとう!」
と感謝されていましたが、
本当の事をいうと、
自分の番が来るまで緊張して
他の人の歌を聴く余裕がないからなのです。
一番先に歌ってしまえば、
あとはゆっくり聴いていられますから。
私がどうやって緊張することなく
歌えるようになったのか、
今回はその方法をお伝えします。
対処療法は数々あるけれど。。。
コンサート本番前には、
緊張を和らげるエクササイズを行っていました。
ドキドキしてくると呼吸が浅くなって、
深いゆったりした呼吸はできなくなります。
気も上部に上がってしまって、
足元はフラフラ宙を浮いている感じになります。
そんな時は、
ゆっくりと呼吸ができるようになる
エクササイズを行ったり、
また、腹部に気が満ちて、
体の余分な力が抜けるエクササイズなどをやりました。
このようなエクササイズは
本番直前にはすごく効き目があります。
しかし、残念ながら緊張を無くす
根本療法では無いことに気が付きました。
風邪をひいてしまったら、
飲むお薬のような対処療法なのです。
それでは、根本療法とは何でしょうか?
緊張することは当たり前のことであると自覚することがひとつ。
だれでも日常と違う場面であれば緊張します。
緊張することはいけないことだと思って、
平常心、平常心と唱えても
緊張をかえって助長するばかりでよね。
だから、
だれでも緊張するのは当たりまえと開き直ること。
緊張すればしただけ、
普段のパワー以上のエネルギーが
発揮できるくらいに思ってください。
そして、もうひとつ。
それは、あなたは何のために演奏しているかを思い出すこと。
違う側面からこの問いを言い換えたならば、
何があなたを緊張させているのですか?
それをじっくり自分に聞いてみる事。
とことん正直になって自分に聞いてみてください。
ここはとても大事です!
もしも、エゴイスティックな答えが出てきても
びっくりしないでくださいね。
そのエゴイスティックな答えを
なかったことにしない事が、
根本から緊張をなくす為の大切な鍵になるからです。
緊張が強いという方に聞いてみると、
◆自分の歌を観客は気に入ってくれるか
◆下手だと思われたくない
◆上手いと思われたい
◆ライバルに負けたくない
等など、
自分の演奏を評価されたい、
認められたいという視点が多いです。
上記のことは、自分ではコントロールできないことなんです。
それは、観客が決めることだからです。
自分がどうすることもできない所に、
エネルギーを注ぐことって、
とても無駄なことをしてしまっていると思いませんか?
そのエネルギーを他に使えるのに、
もったいない使い方をしているのです。
無駄にならないエネルギーの注ぎかたは?
自分が演奏する曲の表現にエネルギーを100%注ぐこと!です。
その曲の聞いてもらいたい美しい箇所が
たくさんあるでしょう?
インターバルだったり、
旋律だったり、
ハーモニーだったり、
ことばの響きだったり、
曲の中にたくさんの美しい所がありますよね。
それを表現して、
伝えられるように100%の力を
注ぐことに徹してみること。
そうしていれば本番中に、
自分のエゴを意識して
緊張している暇などなくなります。
音楽は神様から贈られた素晴らしい宝物。
それを表現できることに
感謝して演奏してください。
演奏中に自分がどう見られているかなんて
小さなエゴ(我欲)に縛られず、
神様から贈られた壮大な宝物を
演奏することに専念してみてください。
その姿勢は演奏にも表れると私は思っています。
小さな我欲に縛られた演奏は
自分の保身の為の演奏から
飛躍することはできないと思うのです。
けれど、
神様からの壮大な宝物を演奏するのは、
自分の我欲を越えて、
違うレベルの世界に
演奏者を連れて行ってくれると思います。
それは聞いてくれる人にも伝わると私は思っています。
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