豊かな響きを備えながらもはっきりと歌詞が聞こえる歌を歌うにはどうしたらいいのでしょうか?
豊かな響きを重視した場合には、歌詞はもごもご何を歌っているのか聞こえなくなります。歌詞がはっきりと聞こえる事を重視した場合には、響きは乏しくなります。
どちらかを優先させると、どちらかがおろそかになってしまうのです。ですから、豊かな響きを備えていて、かつ、歌詞がはっきりと聞こえるというのは、相反したことを融合させた神業と言えると思います。
Uncovering the Voiceでは、この相反した「響き」と「言葉の音」の練習をきっちりと分けて行います。ヴェルベックはまず最初は「響き」の練習から始めて、それから徐々に「言葉の音」の練習を開始するのが良いと述べています。
「響き」の練習を重ねると段々に響きの柱が身体を貫いて出来上がっていきます。頭の部分では、口腔内の後ろ側から頭の上方に立ち上がるように響きの流れを感じられるようになります。
口腔内の前方で形作られた「言葉の音」は無防備に口から外に放たれることなく、頭部の後ろにそびえ立つ響きの柱に沿って上へ上へと上昇していきます。また同時に身体を貫くように通る響きの柱を下方に向けて降りていきます。こうなることで、身体全体が共鳴します。そして、同時に身体の周りの空間も共鳴し始めます。
自分の外にある「原響の世界」に耳をすまして聴く事、隠れた音を注意して聴く事を身に付けると、個人が発する声の中にこの「原響」が余韻として放射するようになります。そして、身体に束縛されている音から解き放たれるからです。
ある程度の響きの柱が立ち上がるのを感じることができたら、言葉の音の練習を始めていきます。
曲の練習をするときも同じで、まずメロディーを歌詞から響きが少ない子音を抜いて、響きがある母音だけで歌う練習から始めます。そして、次はメロディーから離れて、音階を使って歌詞の言葉の音の練習を行います。そして、最後にメロディーを歌詞で歌う練習を行います。
時間がかかり、地道な練習ですが、こういった練習をすると、響きも豊かで、なおかつ、歌詞もはっきりと聞こえる歌が歌えるようになります。
レッスンでお待ちしていますね。
アントロポゾフィー歌唱療法士 平井久仁子