シンギングセラピスト(歌唱療法士)平井久仁子です。
今回は「声のコンプレックスを解いて、自己肯定感ならぬ自声肯定感を高めていく方法についてお伝えします。
レッスンを受けたいと思った動機として、『歌うことに苦手意識を持っているので、それを克服したい。』という希望を多く頂きます。
どうして苦手だと思っているのですか?とお聞きすると、
正しい音程が取れないから、自分がイメージしたように歌えないから、自分の声が好きになれないから等々、他にも様々な苦手な理由があります。
それでは、もしだれもあなたの歌を聞く人がいないところで歌うとしたらいかがでしょう?
子どもの頃はどうでしたか? 歌いたいように歌っていたのではありませんか?
歌うことは苦手と思ってしまったきっかけがどこかでありましたか?
自分ではっきりとその事を覚えている人もいれば、もう覚えていないかもしれません。
もう過去のことは過去のこととして、これからは歌は苦手と思う事をやめてみませんか?
そんなことできるのかしら?
どうすればコンプレックスを解くことができるでしょうか?
今回お伝えする4つの方法で自声肯定感を高めることができます。
1.人と比較することをやめる事
まず初めの一歩は、人と自分の声を比較しないことをお勧めします。
自分の声にコンプレックスを持っていると、ついつい人と比べることをしてしまいます。
「あの人のような声に憧れる」とか、「あの人の声のようになりたい!」と思ってしまいます。
そして、自分の声と比べてしまって、「自分の声は好きになれない」、「自分の声はだめだ」とか思ってしまう。
でもいつもいつもそんな風に人と自分を比較していたら、たぶん一生、自分の声に対して肯定する気持ちは育つことができません。
自分の声はいつも人と比べられて、評価されていたら?
いじけてしまいます。
せっかくあなたという人の、あなただけの声があるのに。
これは、自分より歌が上手い人を羨ましいと思う気持ちにも通じることなのですが、常に上手い人を嫉妬する気持ちを持ち続けていると、自分のことを認めてあげることができなくなってしまいます。
何故かというと、自分より歌が上手いと思える人ははてしなく存在するでしょう?
そうしたら、一生自分のこと認めてあげられなくなりますよね。
そんなはてしない戦いのようなことは止めて、もしも比べたいのなら、過去の自分と現在の自分を比べませんか?
そうすれば、自分の進歩に気が付くことができます。
さて、自分の声と仲良くなってもらう方法は、鼻歌を歌ってみることから始めてみてください。
無邪気に歌っていた頃を思い出して。
何も構えずに、お風呂に入っている時、歩いている時、食事の準備をしている時、移動中の車の中など、いつでも鼻歌を歌ってみてください。
誰に気兼ねすることもありません。楽しい気分で歌ってみるだけです。
2.自分の声を主役にする
あくまでも声は自分が常に主役です。
これは、先ほども述べましたね。
比較するとしても、現在の自分を基準にして、過去の自分と比べてみてください。
決して、他の人の声を基準にしてしまわないように。
生きていれば様々な出来事が起こります。楽しいことばかりではないかもしれません。声にもそれと同じようなことが起こります。
その時々の声を認めてあげて、「うん、大丈夫」と思えるような土台を作っていきましょう。
迷ったらいつでもそこへ戻れるような故郷のような存在です。
この道で合っているのかしら?と迷った時、今度は自分の声が夜道を照らすランプの様にあなたの進む道を明るく照らしてくれるようになります。
自宅でできるエクササイズ2つ
ご自宅でできるエクササイズを2つご紹介します。
【エクササイズ1】
静かな環境に身を置いて、椅子に座ってください。
左右の座骨の上にスッと上半身を乗せて座ります。
そして両膝を軽く開いてください。
その姿勢でため息をつくように、ふわっと息を吐いていきます。
その時、口からただ息を吐くだけでも構いませんし、「ふぅー」とか、
「はぁー」と声を出してもよいです。
吐き始めた瞬間から、スッと立てていた背中の力を抜いて、より椅子の座面にお尻が広がっていって、体が下方向に下がっていきます。
顎の力も抜いて、肩の力も抜けて、上半身の力が抜けていきます。
自分が十分と思うまで続けてみてください。
【エクササイズ2】
上下の唇を震わす練習。リップロールとも言われます。
最初は震えにくいかもしれません。そのような場合には、手を左右の唇の端に添えて上に上げてください。ニコッと笑ったような表情になります。
どうですか?震えやすくなったのではないでしょうか?
最初は震えなくても、心配しないでください。段々と練習を重ねるうちにできるようになります。
子どもの遊びのような練習ですが、これにはものすごい効果があります。
顔の筋肉を緩めて、マッサージしてくれます。そして、振動は口腔内、喉の中にも伝わって、声帯もリラックスします。
今日はたくさん話し過ぎて喉が疲れたという時や、大きな声で話したので喉が痛い時にも効果があります。
また、緊張している時にも使えます。ふるふるとした振動と共に、緊張で固まった顔や頸、胸の筋肉がほぐれて、呼吸がしやすくなります。
上記に挙げたエクササイズは、忙しい毎日の中でも少しの時間を確保すればできる練習です。
その時間は落ち着いて、自分の声と向き合ってみてください。
新しい友達との関係が始まる時のような感覚でエクササイズと仲良くなってください。
友達のことを全部理解していたと思っていても、付き合いを重ねるうちにまだ自分が知らない面を見せてくれる時があります。
そのように、エクササイズとも付き合ってみて欲しいのです。練習を重ねるとエクササイズの事を知り尽くしたような誤解をする時があります。
でも、まだこのエクササイズは自分に新しい驚きを与えてくれるのかもしれないと、毎回新鮮な気持ちでエクササイズを行うと、その通りにエクササイズが新しい気づきを与えてくれるでしょう。
3.自分の権利を守る
「自分の権利を守る」とは、いったいどんなことでしょう?
声のコンプレックスを克服するのと自分の権利を守ることに何の関係があるの?と思われたでしょうか。
それが大いにあるのです。自分の存在をきちんと認めて、自分でそれを守ってあげること、それが自己肯定感に繋がるのです。
それでは、具体的にどうやって守るのかをお伝えします。
法的手段を講じて自分の権利を守る。あるいは、自分の主張を大きなプラカードに記してストライキを行う。このようなイメージを連想された方もいらっしゃるかもしれません。
自分の権利が脅かされている場合には、上記のような行動も時には必要になるでしょう。でも、今日お話しするのは、もっと日常的な事柄に於いてでも、自分の権利を守らなければならないことがあるのです。
私はたくさんの人の前で講演を行うことがあります。
ある講演会には80名位の方が集まりました。講演終了後に聴衆の御一人の方から声を掛けられました。
その方は、「一番後ろの席に座っていたので、時々声が聞き取りにくい事があり残念でした」とおっしゃりました。
私は自分の声の音量にもっと注意して話すべきでしたと謝りました。
でも、その方が2時間の講演時間のなかで自分の権利を守る為にある行動をしていれば、聞こえないというストレスを感じずに、私の話を最後まで聞けることもできたのです。
私が考えられる行動は二つあります。
①講演の途中で、「私の所にはあなたの声は届いて来ないので、聞こえるように話してください」と伝える。
②前方の空いている席に移動する。
途中で席を立って移動するなんて失礼になるかしらとか、講演者の話を遮って、自分の要求を主張するなんて我儘かしらと思って、その場をやり過ごしてしまう方が多いと思います。
でも自分の為にお金と時間を使ってその場にいるのですから、自分の権利を守ることを私はお勧めします。
自分の権利を守ることができたら、どんな場所に居ても、どんな人と居てもお互いが対等な関係でそこに居られると私は思っています。
自分の権利を守るのは自分でしかできません。
どんな時に、自分は自分の権利を守ることを軽んじたか、または、きちんと守ることができたか。
これを日々行うだけでも、また行えなかった場合は、それに気が付くだけでも、自己肯定感は育っていきます。
この間、10代の方とレッスンを行いました。次のエクササイズに行こうとした時、その方は臆することなく、はっきりとした口調で「その練習に入る前にトイレに行かせてください」と言いました。
その発言を私は、きちんと自分の権利を守っていて、頼もしいと思いました。そして同時に、レッスンを大切にしてくれているのだと嬉しく思いました。
教える側と教わる側を超えて、私たちはお互いを尊重する対等な関係でいられることを嬉しいと思ったのです。
日常に起こる本当に些細な出来事からも、どうぞご自分の権利を大切に守ってみてください。
4.客観的に聴ける人に聞いてもらう
自分の声に自信を持てなくなってしまった原因は他人からの心ない言葉が引き金になっていることがあります。
私の所にレッスンに来られる方も、小学校の音楽の授業でみんなの前で歌の試験で歌わされて、思うように歌うことが出来なかった。
そして、通信簿の音楽の点はいつも低かったと話して下さる方が多くいらっしゃいます。
まだ小学生ぐらいですと、しゃべる声の延長で歌うので、歌としての響きができていません。そして、小学生の音域では歌うのが難しい音域の曲だったのかもしれません。地声のような響きの声で歌っているのであれば、高音域になれば無理があり、どうしても声は裏返ってしまって、音程も安定しません。
そのような指導が授業中にきちんとなされていたでしょうか?
そうでなければ、あなたのせいではありません。
皆の前で歌うことはそれでなくても緊張するのですから。
しかし、その体験のせいで自分は音痴であるとか、歌が下手なんだとか思ってしまうのです。
一度思い込んでしまった事は大人になった今でも、呪縛のように思い込み続けてしまいます。
そこで私の提案は、自分の声を客観的に聴くことが出来る人に聴いてもらってください。そして、建設的なアドヴァイスをくれる人に聴いてもらうことをお勧めします。
自分では音が外れてしまってと思っていても、案外思い込みだったということもあります。
または、ずっと歌う事を封印してきたので、歌うための筋肉が使われておらず、その為に声が上ずってしまったり、響きが平坦になってしまっていることがあります。
でもそれは、きちんと歌のエクササイズを行っていけば解消することができます。
まとめ
今回の記事はいかがでしたか?
コンプレックスを持っていると、それだけで自分に自信が持てなくなります。そして、他人の方が優れていると思い込んでしまいます。
でも自分の声は自分だけの一点ものです。
それと同様に、「あなた」という人はこの世界にただ一人の尊い存在です。
ですから、他人と比較することを止めて、大切にしてあげてください。
そして、日常の生活の中で自分の権利を守る行いをしていってください。
その行いが声のコンプレックスを無くして、「自己肯定感」を高めることにも繋がっていきます。
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