シンギングセラピスト(歌唱療法士)平井久仁子です。
アンカヴァーリング・ザ・ヴォイス歌唱法では、
音の練習と、響きの練習を分けて、別々に行います。
それをすることによって、
豊かな響きを湛えつつも
はっきりと歌詞を聞き取れる歌が
歌えるようになるからです。
音と響きって違うものなの?
同じものではないの?
そんな疑問が出てきませんか?
今まで響きとは
何であるかを考えたことがなければ、
音と響きの区別もつかないですよね。
人間の声であっても、
動物の声であっても、
自然界の音、
人工物から発せられる音でさえも、
音の鳴るところに必ず響きが付随しています。
だから音と響きは同じものと思われています。
実は、響きというものは、
響きそのものだけでは耳に聞こえないのです。
音が鳴らない所には、
響きは聞こえるものとして、
現れ出ないのです。
だったら、やはり音は響きと同じゃない!
と思われるかもしれません。
アンカヴァーリング・ザ・ヴォイスの生みの親、
ヴェルベックは
響きと音はまったく別の世界に
存在するものだと考えていました。
音には音の世界があり、
響きには響きの世界がある。
歌の場合の音とは、
歌詞という言語音のことです。
もっと細かく云うと、母音と子音。
この母音と子音が響きを湛える器の役割をします。
母音、子音をどのように形成して
発音するかによって、
響きも変わってくるということです。
例えば、
本来は丸い形をしたお椀にしなければならないのに、
いびつな楕円形をしたお椀であったなら、
そのいびつな楕円形の響きにしかなりません。
また、器のどこかにヒビが入っていれば、
響きはその中に満ちることはなく、
常にそのヒビ割れた部分から
漏れ出ていることになります。
ですから、
言葉の音(母音、子音)を作る時は、
本当に細心の意識を注いで
言語音を形成しなければなりません。
言語音を形成する場所は、
口腔内では真ん中から前方の部分です。
この部分を柔軟にして
きちんと発音できるように、
エクササイズをと通して訓練します。
そして、
もう一つの響きは口腔内の真ん中から
後ろの部分で作られます。
これもエクササイズを通して
響きの道を作るように訓練されます。
こうして言語音形成と響きの練習を
分けて行うことによって、
口腔内でごちゃ混ぜに言語音と
響きが混ぜられることがなくなります。
こんど、
歌い手から現れた出た歌を
どんな風に聞こえるか、
よく聞いてみてください。
響きはとても豊かだけれど、
歌詞が聞き取れない。
または、
逆のパターンもあるかもしれません。
詞ははっきり聞き取れるけれど、
まったく響きがない。
言語音を形成する訓練と、
響きの訓練を別々に行うと、
上記のようなことがなく、
豊かな響きもあり、
なおかつ、歌詞の言語音も
しっかりと聞こえる歌が歌えるようになります。
染色家の志村ふくみさんが
植物の色(生命)を糸に導き入れるとおしゃっていましたが、
まさに響きを正しく形成された言語音の(器)に
導き入れるのです。
響きがより美しく響くように、
器を整えて迎える。
声が大きいから
より響くわけではありません。
響きを味方につけると、
他にも便利なことがあります。
歌を歌う人にとっては、
音響が良い所でいつも歌えれば嬉しいですが、
そういう場所でない時もあります。
そんな時に役にたってくれます。
自分が歌う空間を把握したら、
どのように声を出せばいいか
響きに耳をかたむけるのです。
そうすると響きが教えてくれます。
響きがより響きやすい方へ導いていってくれます。
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