私が1年生として入学した2001年に
それまでヘルシンキ近郊にあった歌の学校も
イルマヨキという地方都市に引っ越してきました。
ヘルシンキからは北に400キロ程離れたところです。
築100年の建物は、村の小学校として使われていました。
子供の数が減り、その学校は統廃合されることになり、
しばらく空き家の状態で放置されていました。
そこが歌の学校としてまた使われることになり、
村の人達は夏の間、ペンキを塗り直したり、
屋根をふき替えたりして、私たちを歓迎してくれました。
今日から授業が始まるという日の朝、
教師と学生は各教室を廻って、讃美歌を歌いました。
この学校がこれからは歌を学ぶ空間であり、
私たちの学びを支えてくれる空間になるようにという
祈りを込めて歌いました。
それから毎日、授業が始まる前に、
各教室を歌って廻りました。
それを半年ほど続けた記憶があります。
その空間に集う人が、
どんな思いを抱いてそこで過ごすかということは、
その空間を保持するエネルギーに影響を与えます。
シュタイナーが「場のエーテル」
ということを言っているのですが、
私は身を持ってこの言葉の意味を経験しました。
歌の学校を卒業してから3年後に、
私は再訪する機会がありました。
毎日、毎日歌っていた教室の響きが
より一層、響く空間に変化していました。
その場所に集い、歌ってきた人々の思いが
この教室の響きを育ててきたのだなと実感しました。
今年の5月から開校した
School of Uncovering the Voice
覆いが取り払われた声の学校では、
この場所のエネルギーを感じる練習をして頂いています。
そして、自分が住んでいる家の空間を整えることを
行って頂いています。
自分の家をどんな思いを込めて、
そのエネルギーが宿る空間にしていくか。
それがしっかりと意図できていれば、
重い腰を上げて掃除をしなくても、
自然と身体が動いて場が整います。
その場所にふさわしいように、
自分が振舞えるからです。
それは、
頭で意図して、
身体は意図したエネルギーを
ちゃんと感じられるからなのです。
今まで訪れた場所で、
自分にとって印象に残っている場所のエネルギーを思い出すこと。
これは覆いが取り払われた声の学校の
コースに参加している皆さんとも
丁寧に見て行きました。
匂いや音、温度や湿度、
肌感覚、
その場所に居ると、自分はどんな気持ちがして、
どんな感覚になるのか。
そして、この練習は、
過去に訪れた場所だけではなくて、
これから訪れる場所でも感じる練習をして頂いています。
神社、寺、教会、美術館、博物館、
レストラン、喫茶店などなど、
どんな意図を持って、その空間を管理しているかが
伝わると思います。
人が少ない時間に、
しばらくその空間で静かに過ごして、
その空間のエネルギーを
感じる練習をしてみてください。
段々と身体で分かってくると思います。
そうやって、その場に居る時の
自分のエネルギーの変化まで
感じ取れるようになります。
場のエネルギーと
自分のエネルギーが同調していきます。
自分の家をどんな空間にしようと
明確に意図できれば、
その場所のエネルギーにふさわしくなるように、
自然と整えられていきます。
そして、
自分からもそのエネルギーが発せられます。
この練習は、
様々に展開できます。
見えない世界と見える世界を繋ぐのが
声の役割です。
聞えない世界を聞こえる世界にすると
表現することもできます。
その時の声にエネルギーが吹き込まれなければ、
それは何のパワーも持たないただの音です。
力がこめられた声にするのは、
自分のエネルギーが満ちていなければ
そのような声にはなりません。
だから、今日ご紹介したのは、
エネルギーが宿った力のある声を出すための
土台の練習でもあります。
まずは、
いろいろな場所のエネルギーを
楽しみながら感じることから始めてみてください!
歌唱療法士 平井久仁子