さて、今日は「耳をひらく」というテーマでお届けします。
私はレッスンの中で、「よく聴いてください」と何回も言います。
自分の声が鳴っている時よりも、声が鳴る前と、
鳴った後の所を注意して聴いてくださいと注文を出します。
耳が教えてくれる
声が鳴り始める前の所を側耳を立てるようにして、
まだ何も鳴っていない空間から、
自分が歌うであろう音を聞き出します。
そうすると、声が唐突に始まらないで、
すでにそこに存在していたかのように、
自然な響きで声が始まります。
それは、耳が教えてくれます。
声が鳴り終わる時も、名残惜しそうに、
いつまでも引き留めて声を出していると、
響きは箱に詰められたような硬さになって、
死んでしまいます。
それをまだ生き生きとした生命力溢れた所で
自分の所から空間に開放してあげると、
響きは自由に、響きたいように鳴ることができます。
旬のうちはいつまでなのか、
いつ離せば、より美しく響くのかは
また耳が教えてくれます。
アンカヴァーリング・ザ・ヴォイスは声だけではなくて、
耳の聴き方も成長させてくれます。
声を終わらせる瞬間に意識すること
自分の声を終わらせるタイミングは、
どのような事に意識を向けていますか?
音符の長さ分を歌って、それで終わりにさせていませんか?
楽譜に書かれている音符の長さを無視して、
長さ以上に伸ばすことは必要ないですが、
どのような事に意識を向けて、音を開放してあげるかに、
耳を使ってみてほしいなと思います。
自分の声が耳から聞こえなくなる瞬間を
どんな意識を持って、解放してあげるか。
声を音符の長さ分だけ歌って、
次の音に進むのでは、
声を物質的、あるいは無機質なものとしか扱っていません。
声を生きている物のように、
音の中にまだ生き生きとした生命力が宿っている時に、
空間に手放してあげます。
声が耳で聞こえている間だけが、
音楽ではなくて、
音が消えて、
(消えてしまうと思うけれど、
本当は消えていなくて、
響きは鳴り続けています!
残念ながら現代の人間の耳には聞こえないだけです。)
空間に解放されて、
次の音が鳴る音と音の間に音楽が鳴り響きます。
自分の声が鳴っている最中は、
あまり音楽としては重要ではなくて、
音と音の間が最も要です。
私達の耳には残念ながら聞こえないけれど、
昔の人が聴くことができていた耳は、
(音と音の間の響きを昔の人の耳には聞こえていたのです!)
人間の文明の進化の過程で失ってしまいました。
(科学、医学が発展して、
何でも見えるもの触れるものしか信じなくなったからです。)
しかし、今は聞こえないからといって、
その響きの世界が無くなってしまったわけではないのです。
音と音の間に、耳を澄まして、開けば開くほど、
響き渡る音の世界を聴くことができるようになります。
私もアンカヴァーリング・ザ・ヴォイスを学び始めた時は、
本当に響きの世界なんてものがあるのだろうか?
と、半信半疑でした。
勝手な妄想?
または、想像の世界のことなのかしら?と。
でも、学びを進めるうちに、
実感が伴ってくるようになります。
では、
どのように耳をひらけばいいのでしょうか?
ヒントは、
自分の内に静けさの空間を作ることにあります。
では、
どうやってその空間を作り出すことができるのでしょうか?
自分の内側を静けさで満たすということ
ざわざわとした音が溢れている所で、
鈴虫の音を聞き出すのは大変なことだと思います。
できるだけ静かな環境であれば、
鈴虫の音を聞き出すことができますよね。
それと同じように、
自分の内側を静かにすれば、
自分の声がまだ鳴る前に、
(一般的な耳の持ち主には、
まだ何にも音が聞こえないのですが。)
自分の声が耳に聞こえるようになります。
一般的な耳の持ち主から、
ひらかれた耳の持ち主になることができます!
では具体的に、
自分の内を静けさで満たすって、
どうすればいいのでしょうか?
あなただったら、どうしようと考えますか?
それは、
自分の中の色々な雑念を消すことです。
歌うという行為を行っている時にも、
実は色々なことを考えています。
例えば、今日のお昼は何を食べようかな?
なんてことも浮かんでくるかもしれませんね。
この例は論外だとしても、
自分の声についての様々な考えや思いが
色々と浮かびませんか?
「綺麗に歌いたい」とか、
「失敗した!」とか、
「期待通りではなかった」とか、
「この声は嫌い」とか、
「下手だな、私」とか、
「なんて美しいの私の声って」とかもです!
その他にも諸々の考えや思いが、
幾重にも渦巻いていて、
自分の内側では、
ものすごい騒音になっています。
それをするのを止める事。
ただひたすら、
声に集中して、
客観的に自分の声を聞く事に専念するのです。
主観が渦巻いている中で、
いくら耳をひらいてみようとしてみても、
音は真の姿を見せてはくれません。
主観的な思いが、
声の覆いになって、
音の本質を開示してくれないのです。
色々と湧き上がる考えや思いを止めると、
自分の内側が静けさで満たされるようになります。
森の湖畔に佇んでいても、
自分の心の中がざわついていたら、
何の音にも気が付くことはできないでしょう。
鳥のさえずりや、
風が湖面を揺らす音など、
本当はそこで鳴っている音さえも
あなたの耳には届かないでしょう?
自分の内側を静けさで満たしてあげて、
どうぞ自分自身の声に耳をひらいてみてください。
今まで聴こえてこなかった、
あなたの本当の声が、
聞こえてくると思います。
こちらの記事も参考にしてみてください。
歌の上達に欠かせない事、
それは客観的に聴く耳を持つという事
*
2019年の秋に、
「耳をひらく」ワークショップを行います。
繊細な響きの楽器の力を借りて、
日頃の不必要な音で満たされた耳のリセットをします。
それから、人は耳だけで音を聞いているのではなく、
皮膚を通しても聴いていることを
実感して頂けるようなワークショップです。
お申し込み開始は、メールマガジンで先行して行います。
この機会に、どうぞメルマガにご登録ください。
[template id="282"]