歌っている時に、身体の何処に余分な力が入っていますか?
それに気づくには、とても注意深く観察しないと分からないと思います。自然に身に付いている動きというのは、ともすれば、それは本当は自然ではなくて、その一連の動きに囚われているだけかもしれません。
たとえば、歌っている時にお腹の筋肉が固くなってくるという場合、横隔膜の動きが妨げられて、肺の可動域が制限されます。横隔膜の所には、太陽神経叢という神経の束のような箇所があり、ここに余分な力が加われば、交感神経の働きにも支障がでます。また、十分な酸素が体の中を廻らないとなれば、骨髄の中を流れている脊椎液は呼吸を介して脳を廻りますがそれにも影響が出ます。ですから、お腹の表面を覆っている筋肉は柔軟である必要があります。
ヴェルベックは歌っている時のお腹は、呼吸に合わせて、大小様々な筋肉が流動的に動くことが必要だと考えていました。なので、Uncovering the Voiceのエクササイズには、お腹を動かして発声するエクササイズが10種類以上あります。
そうやって直接、問題がある所に働きかけるという方法がありますが、問題がある所ではない場所に働きかけて、問題のある所の改善を即すという方法もあります。
お腹に力が入り過ぎて、その力を緩めたい場合、顎を緩めるエクササイズをしたり、舌の根本を緩めるエクササイズを行います。顎も舌もお腹からは離れている場所ですが、関係性があって相互に作用しあっているのです。
歌唱療法のエクササイズで偏頭痛などの場合は、足の指先や甲、足裏を動かすエクササイズを行います。局部から離れた場所で、関連がある所を丁寧に扱う事で改善がみられることがあります。
Uncovering the Voiceのレッスンを体験された方が、話してくださる感想の中で一番多いのは、「今までどれだけ余分な力を入れて歌っていたのかということに初めて気づきました」ということです。普段自然だと思っていた歌い方が、実は力が入り過ぎていたことに気が付かれるのです。
まだ自分の中に不自由で動かない所、使っていなかった所が見つかる。それは、自分の中にまだ知らない自分を見つけることに繋がります。それが最大の変化の契機になると思うのです。
「頑張らなくても、こんなにリラックスしていても、声ってちゃんと響くのですね」という目からうろこ的な感想をお聞きすると、これからその方の声がどのように変化されていくのか、私も楽しみで仕方ありません。
変化の契機を見つけに、どうぞレッスンにお越しください。
楽しみにしています。
アントロポゾフィー歌唱療法士 平井久仁子