
横浜市鶴見区の幼稚園で、
3月から半年にわたって
続けてきた職員研修が先週、終わりました。
最終日の振り返りの時間なかで、
先生たちの感想を聞かせて頂いて、
あらためて感じたことがあります。
幼児は、
私たち大人が思っている以上に、
周りにいる大人をよく見ています。
そして、
見たものを模倣していきます。
だからこそ、幼児の前に立つ保育士が、
「何を教えるか」だけではなく、
自分がどんな在り方でそこに立っているのか
ということが、とても大切なのだと思います。
どんな呼吸をしているのか。
どんな意識で子どもを見ているのか。
何を大切にしているのか。
どんな声で話しているのか。
どんなふうに歌っているのか。
そうしたものすべてが、
言葉にならないまま、
子どもたちに伝わっていきます。
だからといって、
完璧な人にならなければならない、
ということではありません。
この世界に、
完璧な人など一人もいません。
失敗することもありますし、
思い通りにいかないこともあります。
でも、
失敗した自分を認めて、
そこからもう一度歩き出す。
そういった自己教育を、
教師自身が日々、
静かに続けていくことが大切なのだと思います。
そうした目には見えないところで
自分自身を育てていく姿勢は、
その人の空気や声を通して、
自然と子どもたちに伝わっていくのだと思います。
☆☆☆☆
子どもに合わせた声って?
最近、幼児にかかわる大人が、
子どもに話しかけるときに声色を変えて、
とても子どもらしい高い声を使っているのを耳にすることがあります。
けれど、
「本当に、それは必要なのだろうか?」
私は、そんなふうに感じることがあります。
大人は、大人らしく。
ゆったりと落ち着いた声で話しかける。
そして、その声で歌うことが必要なのではないかと。
そのほうが、私は自然なのではないかと思っています。
幼児の歌声についても、
「元気に、明るく、大きな声で歌いましょう」
ということが求められる場面が多いように思います。
もちろん、
子どもたちの元気な声には、
生命力があふれていますよね。
けれど、
元気に歌うことと、
大きな声を出すことは同じではありません。
ともすれば、
「元気な声」を求めるあまり、
声がただの叫び声のようになってしまうこともあります。
では、
どんな声を大人が子どもたちに
手渡していけばいいのでしょう?
私は、
自然の中にある響きを思い浮かべます。
風が森を吹き抜けていくように。
雨が山を下り、街を抜け、海へと流れていくように。
無理に大声をださなくても、
そこにあるものが、
自然にひろがっていくような響き。
そんな声で、大人が歌ってあげる。
すると子どもたちは、
その響きを身体で受け取り、
自然と模倣していくのではないでしょうか。
子どもに「こう歌って」と教える前に、
大人自身がどんな声で歌っているのかに
立ち返ること。
大人の在り方が、
子どもの環境になることを
今回の研修を終えて、
私はあらためて思いました。
声には、
その人の呼吸があり、
身体があり、
意識があります。
そして、
その人がどんなふうに
世界と関わっているのかも、
声の響きの中に現れてきます。
幼児の前に立つ大人が
自分の中に起きていることを感じながら、
子どもの前に立つとき、
そこに生まれる空気は
変わっていくのではないでしょうか。
そしてこのテーマは、
幼児教育にかかわる人だけのものではありません。
私たちはみな、
誰かにとっての環境になっています。
家族にとって、
一緒に働く人にとっての環境に。
そして、
目の前にいる誰かにとっての環境にも。
自分がどんな呼吸をして、
どんな声で、
どんなふうにそこに立っているのか。
それを少し感じてみるだけでも、
声との関係は変わっていくと思います。
声を育てることは、
自分自身の在り方を育てることでもあります。
声を変えようとする前に、
まず自分の呼吸や身体を感じ、
そこから生まれる声に耳を澄ませてみる。
そんなふうに、
自分の声とゆっくり出会っていく時間を
アトリエ・カンテレでは大切にしています。
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アトリエ・カンテレ 平井久仁子
