
平日の夕方に電車に乗りました。
帰宅ラッシュで、車内は満員でした。
車掌さんが次の停車駅をアナウンスしたあと、
「先ほどまで降っていた雨が止んで、今、夕日がきれいです。
しばしの時間、窓の外をご覧ください。
今日も一日お疲れさまです。」
と続けました。
その声は、マニュアル的な響きではなく、
やわらかく、真心から届けられているように感じられました。
その言葉が耳に届いた人たちは、
スマートフォンから目を離し、
窓の外へと視線を移していきました。
そこには、
茜色に染まる夕空が広がっていて、
同じ空を見上げるおだやかな時間が、
車内に流れていました。
車掌さんの一言で、
それまでのどこか殺伐としていた車内の空気が和らぎ、
それぞれの一日が、
美しさで満たされていくようでした。
声はこんなふうに場の温度を変えて、
心に余白を作ってくれる力があるのだと感じた帰り道でした。
電車を降りた後も、
その余韻はまだ私の中に流れていて、
しばらくの間、ホームに立ち、夕焼け空を眺めていました。
声は見えないけれど、確かに、
人と人をつないでくれるもののようです。
あなたが今いる場所から、
どんな空が見えていますか?
アトリエ・カンテレ 平井久仁子
